ミクロ経済学基礎

第6章 消費者選択

投資選択

図6.1 投資選択私たちは大抵国の経済状況に関係なく、お金を払う余裕がある場合、より高い教育(への投資)をよい投資とみなします。(Credit: modification of work by Jason Bache/Flickr Creative Commons)

身の回りの経済学

「どれにしようかな...」ー 選択をするということ

2008年~2009年の大不況が世界中の家庭に影響を与えました。多くの国で、失業者が生まれました。先進国では、失業者補償金がセーフティーネットとなりましたが、家庭ではなお可処分所得が減少し、支出に対する難しい意思決定を強いられました。もちろん、最初に削られたのは必須ではない消費でした。

それでも、国際的に支出の上昇がみられる特定のカテゴリーがありました。特にアメリカ合衆国では18%の上昇がみられました。もしかしたら消費者は家で食事をする機会が増え、食料品店での支出が増加すると考えるかもしれません。しかし、アメリカ合衆国労働省労働統計局の消費者支出調査によると、実際のアメリカの家庭の総食料支出は2006年から2009年の間に5%減少しています。つまり、支出が増加した特定のカテゴリーは食料品ではないのです。世界中の人がこの大変な経済状況の中でどんなものをより求めるのか、また、それはなぜなのでしょうか。この章の最後でその答えをみていきます。

この疑問は、消費者がどのように選択するのかというこの章のトピックにつながります。ほとんどの消費者は「天の神様の言う通り」に意思決定することはなく、もっと複雑なプロセスをたどります。

はじめに

この章では以下の内容を学びます:

ミクロ経済学は、個人や企業のような個々の経済主体の行動を理解しようとします。どんな財やサービスを買うべきか、というような個人の決定を、ある予算制約の中で行う選択として分析することが可能だと経済学者は考えます。通常、顧客は限られた予算を最大限活用しようとします。経済用語を用いて言い換えると、彼らは予算制約の中で総効用、あるいは満足感を最大化しようとしているのです。

誰しも自分自身の趣味嗜好を持っています。フランス人は“Chacun à son goût” すなわち、「好みは人それぞれ」といいます。昔のラテンのことわざには、”De gustibus non est disputandum” すなわち「味の問題は議論できない(蓼食う虫も好き好き)」とあります。しかし、人が自身の趣味や個人的な好みに基づいて選択を行っているとすれば、経済学者ははたして消費者が行う選択を分析することはできるのでしょうか。

なぜ人は異なる選択をするのかについての経済学的な説明は、趣味嗜好は人によって異なる、ということわざの知恵を認めるところから始まります。しかし、経済学者は、人々が行う選択は彼らの収入、財あるいはサービスの価格、どこに住んでいるか等の要因に影響を受けているのだ、とも考えます。この章では、限られた所得で消費者がどんな財やサービスを購入するかを選択するのかという経済理論を紹介します。

この章での分析は、「希少性の世界の中の選択」の章で説明した予算制約に基づいています。この章では経済理論がどのようにして、価格や収入の変化に対して消費がどう反応するか予測するための、すべてのありうる消費選択を体系的に見るためのツールを提供するのかについても見ていきます。この章を読んだ後、無差別曲線を使った効用や選択の図式化についてより深く学ぶために、補論の「無差別曲線」を読みましょう。

6.1 消費選択 »