グリーン・オープンアクセスとゴールド・オープンアクセス
はじめに
オープンアクセスの道のり

出典:open-access.network (2021), Pathways of Open Access (CC BY 4.0 International )
この記事のポイント
- 基本的に、オープンアクセスへの「道のり」(グリーンとゴールド)と、オープンアクセスの「資金調達」の選択肢(出版料の有無)は区別されます。また、別の道のりとして「ダイヤモンド・オープンアクセス」もしばしば言及されます。
- グリーン・オープンアクセス(セルフアーカイブとも呼ばれる)とは、過去に出版された著作物(プレプリントまたはポストプリント版の場合もある)を、機関リポジトリや分野別リポジトリ、あるいは著者の個人ウェブサイトなどで一般に無料公開することを指します。
- ゴールド・オープンアクセスとは、学術著作物をオープンアクセスジャーナルやオープンアクセスモノグラフとして、あるいはオープンアクセスのコレクションへの寄稿として出版することを指します。原則として、これらの著作物はクローズドアクセスの出版物と同様の品質保証プロセスを経ます。ダイヤモンド・オープンアクセスは、出版料なしで資金調達されるゴールド・オープンアクセスのサブタイプです。ダイヤモンド・オープンアクセス出版は、コミュニティ主導の非営利的な背景を持つことがよくあります。
グリーン・オープンアクセス

出典:Oberländer, A. (2020). Open Access – Es ist nicht alles Gold, was glänzt. In: Open Science. Von Daten zu Publikationen. Zenodo. https://zenodo.org/records/4018594 (CC BY 4.0 International )をもとに作成
グリーン・オープンアクセス (セルフアーカイブ とも呼ばれる)とは、出版社から出版された著作物を、機関または分野別のオープンアクセスリポジトリ で一般に公開することを指します。著者の個人ウェブサイトで著作物を公開することもこれに含まれると解釈される場合があります。セルフアーカイブは、出版社によるコンテンツの公開と同時に行われることもあれば、後日行われることもあり、学術論文のプレプリント やポストプリント だけでなく、モノグラフ、研究報告書、会議録などの他の文書タイプでも可能です。
プレプリントとポストプリント

出典:Shafee, T. (2020). Typical publishing workflow for an academic journal article (preprint, postprint, and published) with open access sharing rights per SHERPA/RoMEO. Own work; adapted from diagram by Ginny Barbour Wikimedia Commons (CC BY 4.0 International )
プレプリントとは、査読(ピアレビュー)を(まだ)受けていない学術出版物のことであり、その著作物の品質がまだ最終的に評価されていないことを意味します。ジャーナルや出版社に出版のために提出されたテキストの原稿版も、プレプリントと呼ばれることがあります。
プレプリントとは対照的に、ポストプリントとは、すでに査読を受け、出版が受理されたテキストのことです。ポストプリントには 2 つのタイプがあります。1 つは、出版社版、つまりVersion of Record(記録版) と完全に同一のポストプリントです。もう 1 つは、内容は同じでも、フォーマット、レイアウト、またはページ付けが異なる場合です。後者の場合、ポストプリントは著者最終稿(AAM: Author’s Accepted Manuscript)と呼ばれます。ポストプリントやプレプリントのセルフアーカイブを許可する出版社の意向は大きく異なります。Open Policy Finder データベースは、この点に関して出版社が著者に付与している権利の概要を提供しています。ドイツの著作権法の下では、著者は特定の条件下で、出版社の同意の有無にかかわらず、ポストプリントを一般に公開することが許可されています。これは二次出版権(Zweitveröffentlichungsrecht) として知られています。
グリーン・オープンアクセスのバリエーション
オープンアクセスに関する議論において、グリーン・オープンアクセスを提供する方法は 3 つに区別されます。第一に、著作物を機関リポジトリで公開することができます。この場合、著者は自身の所属機関(大学など)が運営する分野横断的なドキュメントサーバーに学術テキストを登録(寄託)することが可能です。第二に、著作物を分野別リポジトリで公開する場合もあります。これは、著者の所属機関に関わらず、特定の主題分野(専門分野など)の成果物を収集・公開するリポジトリです。第三のバリエーションは、学術文書を自身の個人ウェブサイトに掲載することです。しかしこの手法では、原則として、機関リポジトリや分野別リポジトリにアーカイブした場合と比較して、文書の可視性(発見のされやすさ)が低くなります。さらに、長期的な利用可能性が保証されないため、このタイプのセルフアーカイブはオープンアクセスとして認められないことがよくあります。これは、例えば「科学・人文科学における知識へのオープンアクセスに関するベルリン宣言 」の場合に当てはまります。 オープンアクセスリポジトリのリストは、Directory of Open Access Repositories (OpenDOAR ) および Registry of Open Access Repositories (ROAR ) で確認できます。
ゴールド・オープンアクセス
オープンアクセス出版(ゴールド・オープンアクセス とも呼ばれる)とは、学術著作物をオープンアクセスジャーナル の論文として、オープンアクセスモノグラフ として、またはオープンアクセスの編集論文集や会議録への寄稿として、最初から出版する(一次出版)ことを指します。これらのテキストは通常、査読(ピアレビュー)や編集レビューの形で、クローズドアクセスの著作物と同様の品質保証プロセスを経ます。原則として、出版社と出版契約が締結されます。契約では、著者が出版社に付与する利用権と、オープンアクセス文書に適用される利用条件が指定されます。このような契約は、著者がユーザーに対してより広範かつ明確に指定された権利を付与できるオープンアクセス出版ライセンスによって補完されることがよくあります。

出典:Oberländer, A. (2020). Open Access – Es ist nicht alles Gold, was glänzt. In: Open Science. Von Daten zu Publikationen. Zenodo. https://zenodo.org/records/4018594 (CC BY 4.0 International )をもとに作成
資金調達
オープンアクセス出版物もクローズドアクセス出版物も、資金を調達する必要があります。オープンアクセス出版物の資金調達の選択肢は、クローズドアクセス出版物の資金調達に使用されるものと同様です。つまり、印刷版の販売、科学コミュニティ・科学機関・ボランティアからの無償支援、広告やスポンサーシップなどです。時にはクロスファイナンス(相互融通)も行われます。特に、ゴールド・オープンアクセスのビジネスモデルを試したい商業出版社は、購読ビジネス からの収益で新しいジャーナルの資金を賄うことがあります。論文掲載料(APC)(モノグラフの場合は書籍掲載料(BPC))といった出版料 は、典型的なゴールド・オープンアクセスの資金調達モデルとして挙げられることがありますが、これらはクローズドアクセス出版でも広く普及しています (Gutknecht, 2018)。APC は受理され出版された論文ごとに支払われ、機関メンバーシップと組み合わせることができます。出版する著者がオープンアクセス出版社と機関メンバーシップを結んでいる機関に所属している場合、その機関が出版料の全額または一部を負担します。さらに、多くの機関は、例えば出版基金 を通じて、これらの費用の払い戻しに関するさらなる可能性を提供しています。
オープンアクセス論文の資金調達に関する動画
出典:Brinken, H. (2020). Finanzierung von Open-Access-Artikeln, open-access.network. https://doi.org/10.5446/49536 (CC BY 3.0 DE )
オープンアクセスモノグラフの資金調達に関する動画
出典:Brinken, H. (2020). Finanzierung von Open-Access-Monographien, open-access.network. https://doi.org/10.5446/49535 (CC BY 3.0 DE )
ダイヤモンド・オープンアクセス
オープンアクセス出版物が APC を完全になくしている場合、つまり読者にとって無料であり、かつ著者にも出版料を請求しない場合、このゴールド・オープンアクセスの特別なタイプは、ダイヤモンド・オープンアクセス とも呼ばれます。さらに、ダイヤモンド・オープンアクセス出版は、コミュニティ主導の非営利的な背景を持つことがよくあります。ダイヤモンド・オープンアクセスとゴールド・オープンアクセスの関係に関する詳細情報、およびダイヤモンド・オープンアクセスのさまざまな定義に関する議論は、Dellmann et al. (2022) で見つけることができます。CRAFT-OA プロジェクト (Armengou et al., 2024) は、ダイヤモンド・オープンアクセスのより広範な定義を提案しています。
Bosman et al. (2021) による「OA Diamond Journals Study」では、特にジャーナルにおいて、このような出版フォーマットの可能性と課題が議論されており、ダイヤモンド・オープンアクセスジャーナルはしばしば自発的な活動(ボランティア)に依存しており、通常はコンソーシアムモデル、機関による資金提供、クラウドファンディング、または会員モデルを通じて出版資金を調達していることが示されました(pp. 117–118 参照)。ドイツおよびスイスのダイヤモンド・オープンアクセスの状況の概要は、それぞれ Hahn et al. (2022) および Taubert et al. (2024) で見つけることができます。
ダイヤモンド・オープンアクセスを、公正で、研究者主導(scholar-led) の、非営利的なオープンアクセスのバリエーションとして促進し、イニシアチブを連携させるために、UNESCO は 2024 年に Global Diamond Open Access Alliance を立ち上げました。EU レベルでは、欧州連合理事会がダイヤモンド・オープンアクセスの促進を推奨しています (Council of the European Union, 2023)。ドイツでは、ドイツ研究振興協会(DFG)が 2024 年に、ダイヤモンド・オープンアクセスのための国立サービスセンターを設立するための公募 を行いました。

出典:Oberländer, A. (2020). Open Access – Es ist nicht alles Gold, was glänzt. In: Open Science. Von Daten zu Publikationen. Zenodo. http://doi.org/10.5281/zenodo.4018594 (CC BY 4.0 International )をもとに作成
ダイヤモンド・オープンアクセス・コミュニティのアクター:公平で共同的なダイヤモンド・オープンアクセスへの 6 つのアクターグループとその貢献

出典:Henkes, L. M., & Holscher Blackman, K. (2025). Wissenschaftliches Publizieren neu denken. Blaupause für gemeinschaftliches und faires Diamond Open Access. Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.17240865 (CC BY 4.0 International )
中間の道(Middle Ways)
ゴールド・オープンアクセスとグリーン・オープンアクセスの間には、段階的な中間ポジションも存在します。例えば、社会科学リポジトリ Social Science Research Network (SSRN) では、著者はすでに出版されたジャーナル記事をオープンアクセスで公開することと、原稿のプレプリント版を投稿・共有して SSRN パートナージャーナルに提出することの両方が可能です。数学 分野における epijournals 、またはオーバーレイ・ジャーナル (Gowers, 2015) もその一例です。これらは、プレプリントサーバーやリポジトリのインフラを利用するオープンアクセスジャーナルです。著者は原稿のプレプリント版を arXiv や Hyper Articles en Ligne (HAL) に登録し、その後 epijournals の一つに出版のために提出します。査読を経て投稿が受理された場合、元のプレプリント版は出版社版と並んで利用可能なままとなります。一部の Copernicus Publications や F1000 ジャーナルも同様の原則で運営されており、オープン・ピアレビューが行われます。クローズドアクセス出版社も、arXiv に登録された原稿を自社の投稿ワークフローに自動的に取り込めるようにすることで、同様の方法で arXiv を利用しています。出版社で出版する前に論文のプレプリントをオープンアクセスリポジトリに登録することは、ゴールド・オープンアクセスとグリーン・オープンアクセスの両方の特徴を持っています。博士論文や逐次刊行物などの文書をリポジトリで初めて出版することも、ゴールドとグリーンのハイブリッド形態の一種です。これらの著作物は初めて出版されるため、その出版はゴールド・オープンアクセスとみなすことができます。しかし、出版は通常グリーン・オープンアクセスを提供するために使用されるリポジトリで行われます。
グリーンおよびゴールド・オープンアクセス出版以外にも、他のバリエーションに色のシンボルが割り当てられることがあります (Piwowar et al., 2018; Schmeja, 2018)。これらの出版物は、例えばジャーナル記事が無料で読めるものの長期的に再利用可能でない場合など、厳密な意味でのオープンアクセスではない可能性があります。
オープンアクセスの虹に関する動画
出典:Schmeja, S. (2020). Der Open-Access-Regenbogen, open-access.network. https://doi.org/10.5446/49667 (CC BY 3.0 DE )
参考文献
- Armengou, C., Bargheer, M., Gingold, A., Holsinger, S., Laakso, M., Mitchell, D., Mounier, P., Pölönen, J., Rooryck, J., Ševkušić, M., Souyioultzoglou, I., & Varachkina, H. (2024). Operational Diamond OA criteria for journals. DIAMAS and CRAFT-OA projects. https://zenodo.org/records/12721408
- Bosman, J., Frantsvåg, J. E., Kramer, B., Langlais, P.-C., & Proudman, V. (2021). OA Diamond Journals Study. Part 1: Findings. https://doi.org/10.5281/zenodo.4558704
- Council of the European Union (2023). Council conclusions on high-quality, transparent, open, trustworthy and equitable scholarly publishing.
- Dellmann, S., van Edig, X., Rücknagel, J., & Schmeja, S. (2022). Facetten eines Missverständnisses. o-bib 9(3). https://doi.org/10.5282/o-bib/5849
- Gowers, T. (2015, September 10). Discrete Analysis - an arXiv overlay journal. Gowers’s Weblog. https://gowers.wordpress.com/2015/09/10/discrete-analysis-an-arxiv-overlay-journal
- Gutknecht, C. (2018, January 8). Publikationskosten für Closed-Access: die verschwiegenen APCs. Wisspub.net. https://wisspub.net/2018/01/08/apcs-von-denen-fast-niemand-spricht/
- Hahn, D., Hehn, J., Hopp, C., & Pruschak, G. (2022). Mapping the Swiss landscape of diamond open access journals. The PLATO study on scholar-led publishing. https://doi.org/10.5281/zenodo.7461728
- Piwowar, H., Priem, J., Larivière, V., Alperin, J. P., Matthias, L., Norlander, B., Farley, A., West, J., & Haustein, S. (2018). The state of OA: a large-scale analysis of the prevalence and impact of Open Access articles. PeerJ, 6, e4375. https://doi.org/10.7717/peerj.4375
- Schmeja, S. (2018, October 24). Gold, Grün, Bronze, Blau…: Die Open-Access-Farbenlehre. TIB-Blog. https://blogs.tib.eu/wp/tib/2018/10/24/gold-gruen-bronze-blau-die-open-access-farbenlehre/
- Taubert, N., Sterzik, L., & Bruns, A. (2024). Mapping the German Diamond Open Access journal landscape. Minerva, 62(2), 193–227. https://doi.org/10.1007/s11024-023-09519-7
最終更新日:2025 年 10 月 21 日
この記事は、 open-access.network による Green, Gold, and Diamond Open Access を翻訳したものです。もとの記事は CC BY 4.0 ライセンス のもとで提供されています。翻訳版も同じく CC BY 4.0 ライセンスのもとで提供されます。