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知られざる優良事例

公共の利益について考えるとき、多くの人は道路、学校、病院などを思い浮かべます。しかし現在では、ソフトウェア、より正確には自由ソフトウェアも公共の利益を支えるものとして捉える行政機関が増えています。公費で開発されたソフトウェアのソースコードを公開し、他の機関と共有するプロジェクトは、日々増え続けています。たとえば、ドイツの共同図書館ネットワーク(GBV)は、ドイツ各地の図書館で利用されている自由ソフトウェアのソリューションを提供しています。1 ルクセンブルク政府は、多くの医療従事者や診療所で利用されている電子健康記録システムを提供しています。2 オランダ内務省は、中央住民登録データベース(BRP)のソースコードの大部分を公開しています。3 チェコ財務省は、各機関の予算計画をオンラインで可視化するツールを提供しています。4自由ソフトウェアの中には、国境を越えて活用されているものもあります。フィンランド国土地理院は、地理空間データや統計データを可視化・分析するソフトウェア「Oskari」を開発しました。Oskari には、新しいインフラ事業に対する市民からの意見を受け付ける機能、不動産情報サービス、漁業区域の表示などが含まれています。5 その実績を受け、アイスランドの国立地理情報ポータルやモルドバ国土地理院も Oskari を採用しています。

自ら開発したソフトウェアのコード公開を検討しない行政機関は、重要な機会を逃していることになります。再利用できる可能性のあるコードを他の公的機関から見えない状態にしておけば、同じようなソフトウェアが重複して開発され、その結果、行政機関と納税者の双方に余分なコストが生じる可能性があります。

こうした好事例の積み重ねにより、行政機関は、自らのプロジェクトのソースコードを共有することが自身の利益にもつながると認識するようになっています。数百もの公的機関が、コード共有のための民間プラットフォーム GitHub にアカウントを持っており6、独自の公共コードリポジトリを運営している国もあります。

現在、公共部門で起きている変化は、単に公開されるソフトウェアの数が増えているというだけではありません。これは、より良いガバナンスと、行政サービスの透明性向上を目指す取り組みでもあります。コードの透明性は、とりわけ機微な分野において、デジタル行政インフラへの信頼を高めることが実証されています。自由ソフトウェアを採用する方針によって、独立した第三者によるセキュリティ検証も可能になります。フランス国家サイバーセキュリティ庁が、行政機関同士の安全な通信のために提供している暗号化インスタントメッセージ・アプリケーションは、Matrix と Riot という2つの自由ソフトウェア・プロジェクトを基盤としています。また、自由ソフトウェア・プロジェクトの OSiP(Online-Sicherheitsüberprüfung、オンライン・セキュリティチェック)は、ドイツの空港におけるセキュリティ審査を支援するために利用されています。7受賞歴を持つウクライナの透明な公共調達システム ProZorro のコードも、オンラインで検証することができます。8 Transparency International Ukraine も、このコード公開の方針を支持しました。9自由ソフトウェアがもたらす経済的な利益以上に重要なのは、民主主義において最も価値ある資産、すなわち国家のインフラに対する市民の信頼を獲得することです。現代国家のインフラが IT に依存する度合いが高まれば高まるほど、この点の重要性も増していくでしょう。

  1. German Union Library Network ↩

  2. Luxembourg open-source health records ↩

  3. Dutch Ministry of the Interior ↩

  4. Czech Ministry of Finance ↩

  5. Oskari ↩

  6. Government GitHub community ↩

  7. OSiP ↩

  8. OpenProcurement and Transparency International Ukraine ↩

  9. Open Government Toolbox: https://ogptoolbox.org ↩