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第1章 社会心理学入門

スウェーデンの著名で裕福な家庭に生まれたラウル・ワレンバーグは、特に母親と祖父との強い絆の中で育った(父親はそれ以前に癌で亡くなっていた)。幼い頃から語学の才能を示し、英語、フランス語、ドイツ語、ロシア語を流暢に話せるようになった。ラウルはアメリカで大学教育を受け、学業で優れた成績を収め、1935年にミシガン大学で建築学の学士号を取得した。その後、南アフリカ、次いでパレスチナで生活し働いたのち、母国スウェーデンに戻った。そこで彼は、ナチス・ドイツにおけるユダヤ人の扱いを次第に強く懸念するようになった。輸出入業の仕事でハンガリーのブダペストを訪れるようになったが、1944年までにナチスは毎日1万人から1万2千人ものユダヤ人をガス室で殺害するために送り込んでいた。ワレンバーグがブダペストのスウェーデン大使館での職を引き受けたのは、ちょうどこの頃だった。

ラウル・ワレンバーグの彫刻

図1.1 ラウル・ワレンバーグ。ロンドン、グレート・カンバーランド・プレイスにあるラウル・ワレンバーグ像

その後の6か月間に起こったことは、勇気と思いやりに満ちた、驚くべき奇跡的な物語である。ハンガリーのユダヤ人を救うために自分にできることは何でもしなければならないと決意したワレンバーグは、まず事務所を設立し、400人のユダヤ人のボランティアを「雇用」した。そうすることで、彼らが外交上の保護を受けられるようにしたのである。次に、政府の許可を得ることなく、公式文書らしく見えるスウェーデンの旅券「シュッツパス(Schutzpass)」を考案し、可能な限り多くのユダヤ人に配布した。この偽造旅券だけでも、およそ2万人のユダヤ人の命を救うことに貢献した。さらに、スウェーデン大使館に付属する32か所の「安全な家」を設置し、3万5千人のユダヤ人を保護した。彼は毎晩わずか4時間ほどしか眠らず、長時間働いた。ハンガリーのユダヤ人を救うという目的を達成するため、役人たちに賄賂を渡し、駆け引きをし、対決し、執拗に働きかけた。

ソ連軍が東から侵攻すると、ナチスはハンガリーのユダヤ人住民の殲滅をさらに加速させ始めた。ワレンバーグはただちにナチスの司令官を脅し、人道に対する罪によって自分が責任を持ってその司令官を絞首刑にすると告げた。司令官は引き下がり、攻撃を中止した。その結果、さらに7万人のユダヤ人の命が救われた。

しかし不幸にも、ワレンバーグはソ連当局に逮捕され、その後二度と消息が確認されることはなかった。一部の報告によると、彼はその後何年にもわたってソ連の刑務所に収容され、最終的にそこで死亡したとされている。

ラウル・ワレンバーグは、オーストラリア、カナダ、ハンガリー、イスラエル、アメリカ合衆国の名誉市民となっており、世界各地に彼の名を冠した記念碑や賞が存在する。1985年、彼の逮捕40周年に際して、アメリカの国連大使はワレンバーグについて次のように述べた。彼は「一人の人間を超え、英雄という存在すら超えた。彼は、圧政に直面してなお人間らしさと思いやり、そして自由を保とうとする決意という、現代の中心的な葛藤を象徴している。ブダペストでラウル・ワレンバーグが体現したものは、まさに文明世界の良心そのものであった」。

Schreiber, P. (2014). The Story of Raoul Wallenberg. Retrieved from http://www.wallenberg.umich.edu/story.html.

社会心理学とは、私たちが周囲の人々についてどのように感じ、考え、それらの人々に対してどのように行動するのか、そして私たちの感情・思考・行動がそれらの人々によってどのような影響を受けるのかを科学的に研究する学問である。 この定義が示すように、社会心理学の研究対象は非常に幅広く、私たちが日常的に行うほとんどあらゆることの中に見いだすことができる。社会心理学者は、なぜ私たちがしばしば他者を助けるのか、また別の場面ではなぜ非友好的になったり攻撃的になったりするのかを研究する。他者と良好な関係を築くことの利点と、孤独であることの代償の両方を研究する。人々がある商品ではなく別の商品を購入する要因、男性と女性が社会的状況においてどのように異なる行動をするのか、陪審員が重要な集団意思決定をどのように共同で行うのか、また、なぜある人々は他の人々よりもリサイクルなどの環境に配慮した行動をとりやすいのかについても研究する。そして社会心理学者は、見ず知らずの他人の命を救うために、なぜ自らの命を危険にさらす人がいるのかといった、より非日常的な出来事についても研究する。

本書の目的は、社会心理学者と同じような方法で社会的行動について考えることを学んでもらうことである。このアプローチは、人間の行動をより批判的かつ客観的に考え、自分自身と他者との関係について洞察を得られるようにするため、有用であると私たちは考えている。社会心理学者は日常的な行動を科学的に研究し、その研究によって、私たちの日常的な社会的相互作用について有用な知識体系を築いている。