コンテンツにスキップ

自由ソフトウェアが競争に与える影響

行政機関が自由ソフトウェアを公開することは、市場を歪めるのでしょうか? Simon Schlauri 教授は、この問いから生じる法的・経済的な論点について、スイスのベルン州のために詳細な報告書をまとめました。自由ソフトウェアは、ITの世界ですでに広く定着しています。中小企業からグローバル企業まで、数多くの企業が自由ソフトウェアのさらなる開発と利用に多額の資金を投じています。現在では、行政機関も自由ソフトウェアを日常的に利用しています。たとえば、自治体の行政業務、裁判所の判例データベース、インターネット上での地理データの提供などに利用されています。1企業や行政機関が自由ソフトウェアを利用する理由はさまざまです。使用される標準のオープン性、特定の供給事業者や製品からの独立性、利用者・開発者コミュニティとの交流、セキュリティ、安定性、さらにはコスト削減の可能性などが挙げられます。

自由ソフトウェアを自由に利用できることによって、ソフトウェア開発者、保守やサポートなどの付随サービスを提供する事業者、そして利用者が対等に関与するエコシステムが生まれます。自由ソフトウェア・モデルのもう一つの重要な利点は、ソースコードを第三者が利用できるようにすることで、利用者と開発者によるソフトウェア開発が加速することです。

行政がソフトウェアを自由ソフトウェア・ライセンスのもとで公開することが、競争中立性、すなわち国家が競争事業者を平等に扱う義務に反するかどうかについては、議論の余地があります。一部の国では、国家の行為について競争中立性を確保する義務が憲法上の原則となっています。また、単一市場政策、公共調達法、国家補助法など、欧州法からこの義務が導かれる場合もあります。

行政自身が市場に参入し、その過程で商業的利益を追求する場合、競争中立性の観点からは一般に問題になりません。一方、それ以外の動機、たとえば公共の利益を考慮した活動は、多くの場合、市場の歪みにつながり、競争中立性に反することになります。極端な場合には、一般会計からの公費によって公共サービスが補助されることで、民間の活動が公的供給によって完全に排除されることさえあります。逆に言えば、行政が合理的な民間事業者と同じように行動するほど、競争を歪めるリスクは小さくなると考えられます。

行政が自由ソフトウェアを提供することが許されるかどうかは、民間の市場参加者の立場から見た場合にも、自由ソフトウェアの公開が成立しうるビジネスモデルであるかどうかに左右されます。つまり、行政と同様の状況にある民間の市場参加者も、ソースコードを自由ソフトウェア・ライセンスのもとで公開するという判断をするかどうかが基準となります。2

さらに、補助金に関する法制度を参照することも有用です。補助には、返済不要の現金給付、有利な条件での融資、保証、無償または割引価格で提供されるサービス、現物給付などが含まれます。EUの判例によれば、同様の状況で、関連する行政機関と比較して民間投資家が同じ措置を取らなかった場合には、このような利益が存在すると考えられます。3

公共インフラにおけるソースコードを示した Public Money Public Code キャンペーンのビジュアル

出典:キャンペーン動画 Public Money Public Code CC BY 4.0 fsfe.org & motionensemble.de.

したがって、民間の市場参加者にも自らのコードを自由ソフトウェア・ライセンスのもとで無償公開するさまざまな理由がある以上、行政が自由ソフトウェアを公開することも、競争中立性の観点から多くの場合問題にはなりません。

さらに、行政機関がクローズドソース・ソフトウェアだけを重視すれば、前述した自由ソフトウェアのエコシステムに参加する企業を差別することにもなり、やはり競争中立性の原則に反する可能性があります。

また、公共調達法の観点からは、2つ以上の公共調達機関が共同の自由ソフトウェア・プロジェクトの枠組みで協力できるかどうかという問題も生じます。EU公共調達指令のもとでは、公共機関同士に契約上の基盤があり、その契約に基づいて共通の目的を追求し、協力がもっぱら公共の利益のために行われ、さらに参加する調達機関が協力対象となる活動の20%未満しか市場全体で実施していない場合、このような協力は可能です。特に行政専用のソフトウェアについては、ほとんど問題になりません。4

ただし、行政機関による自由ソフトウェアの公開が、その行政機関に法律上割り当てられた業務の範囲を超える場合、公正取引や行政法の観点から問題となる可能性があることには注意が必要です。たとえば、一般的なオフィスソフトウェアを任意の行政機関が配布することは認められません。5

それでも、多くの場合、行政が自由ソフトウェアを公開する方針に問題はありません。民間の市場参加者にも当てはまる、合理的な公開理由が数多く存在するからです。

Simon Schlauri 教授のポートレート

  1. OSS study 2018; Thomas Poledna, Simon Schlauri, and Samuel Schweizer, Gutachten zu den rechtlichen Voraussetzungen der Nutzung von Open Source Software in der öffentlichen Verwaltung, Berlin 2017, pp. 23 ss. ↩

  2. Poledna, Schlauri, and Schweizer, pp. 101 ss., 108. ↩

  3. Poledna, Schlauri, and Schweizer, p. 107 s. ↩

  4. Poledna, Schlauri, and Schweizer, pp. 123 ss. ↩

  5. Poledna, Schlauri, and Schweizer, pp. 85, 158. ↩